2020年度 剣岳・立山ガイドプラン

剱岳・立山・黒部、地元のガイドが案内します。

「剱岳に挑戦」

制作:木下永三
2009年9月に剱岳をガイドした木下永三さんが登攀中にさ撮影された映像です。
youtubeにUPされたので、ここに、リンクさせていただきました。

剣岳・別山ルート解説

コース:剣沢小屋~本峰(山頂)往復

剣沢キャンプ場手前より

剱岳・別山尾根・・・・剣沢キャンプ場手前より
剣岳・本峰(から右に派生しているのが八ツ峰(奥)と源次郎尾根(前)

剣沢小屋

剣沢小屋

剣沢小屋は、三代続く老舗の山小屋であり剣岳登山の重要な登山基点である。また、地元のガイドに加え全国から多くのガイドが利用し日々変化する剣岳の豊富な情報交換も行われていれるガイドにとっては重要な山小屋だ。

さて、剣沢小屋(2,400m)をスタート前に、始めてのお客様には小屋のご主人がルート説明、危険箇所等、最新の情報を詳しくアドバイスしてくれるのでしっかり情報を掴んでおこう。
㊟小屋のご主人は、若くてジャニーズ系のハンサムボーイなので特に若い女性はハートを奪ばれないよう注意したい!

後立山が登場

後立山が登場

早朝に小屋を出て剣沢雪渓を渡ると朝焼けの唐松岳が見えてくる。次に五竜、鹿島槍と剣山荘へ行く間に姿を見せてくれる。筆者も大好きな光景を何時も楽しみにしている。

剣山荘

剣山荘

剣沢小屋からここまでほぼ水平、約40分。 ここから一服剣の上りが始まる。この間、鎖場が2箇所約30分で一服剣に到着。なお、剣山荘へは、剱沢を経由せず剣御前小屋から直接入れる登山道もある。

剱山荘近くの“クロユリのコル”から観る剣岳・別山尾根

剱山荘近くの“クロユリのコル”から観る剣岳・別山尾根

手前左下のピークが一服剣、そこから一旦、武蔵のコルへ下って前剣(本峰下ピーク)、そして、平蔵のコルを経て本峰(最奥のピーク)に・・・・・。本峰から左に派生しているのが早月尾根、右は源次郎尾根。 剣岳登頂後、天気が良くて時間があれば、この“クロユリのコル”へ行くのも良い。剱山荘から約10分、剱山荘から見えないこのような剣岳が望める。

武蔵のコル

武蔵のコル

一服剣から6~7分ほど下ると武蔵谷が突き上げる武蔵のコルに出る。ここのガレ場でオコジョをよく見かける。バックに見えるのが奥大日岳(左)と大日岳(右奥)

武蔵のコルから前剣への登り

武蔵のコルから前剣への登り

武蔵のコルから前剣の急峻な岩場の登りが始まる。約50分で前剣に到着。筆者は、途中、岩登りの基礎訓練である三点支持の訓練行いながら登る。岩場が一番急峻なところに目印とされている”前剣大岩”に着く。この間、*落石が多発しているので注意したい。そこから鎖に導かれて登る。この鎖場で鎖に*カラビナの架替練習を行いながら前剣へ。

*カラビナ・・・セルフビレイ(自己確保)のためハーネスから取ったカラビナを鎖に掛けて滑落の際に身を守る。

*落石多発・・・別山尾根で事故の多いのが前剣大岩付近だ。特に下山中の落石事故が多いので注意したい。また、ヘルメットも必需品。

前剣山頂(2,813m)

前剣山頂

武蔵のコルから、大岩を経て前剣山頂に着くと視界も開け漸く本峰が顔を現す。“マエツルギ”の呼称が多いが地元の山関係者は“ゼンケン”と呼ぶことが多い。また、戦前、軍隊が訓練に登った際、ここが本峰と勘違いしたことから“軍隊剣”の別名もある。

影剣

影剣

右下が富山平野側に影を移す”影剣”。影の右肩が本峰山頂、左肩のやや丸いピークが前剣、その後の笠雲を被っているのが大日連山。天気の良い日は、富山平野、富山湾、そして、能登半島がよく見える。

鉄の橋とトラバース

鉄の橋とトラバース

前剣からいよいよ剣岳らしい岩場の登攀が始まる。痩せた岩稜を行くと右に平蔵谷、左に東大谷へと切れ落ちた鞍部に”鉄の橋”が掛かっている。そこを渡ると次に10mほどの垂壁のトラバースが始まる。鎖と大きなスタンスがあるので一歩一歩行けば問題無い。なお、鎖場は、ワンスパン一人を心掛けたい。

前剣の門への下り

前剣の門への下り

トラバースを終えると次は下りの鎖場が待っている。ここは、しっかり鎖に捕まってスタンスを確認しながら下る。 ㊟登り(右)と下り(左)の鎖があるので注意。

前剣の門

前剣の門

左側の東大谷右俣から突き上げたところが前剣の門。左右の岸壁が狭って門扉のようだ。 その間の向こうに奥大日岳、その後ろに白山が望める。

ケルンのある広場

ケルンのある広場

前剣の門から平蔵谷側の緩やかな斜面と岩稜をたどると開けた大きなケルンのある広場に出る。なお、無雪期は問題無いが残雪のある時期はルートファンデングとスリップに注意したい。

平蔵の頭の登り

平蔵の頭の登り

ケルンからトラバースぎみに進むと平蔵の頭に着く。ここから本格的な岩登りとなる。
鎖に頼らずホールド、スタンスを確認しながら一歩一歩登る。7~8mほど登ると、今度はスラブ状の斜面を下る。

㊟登り(右)と下り(左)の鎖があるので注意。

平蔵の頭の下り

平蔵の頭の下り

スラブ状の壁を約20m下る。壁は見た目ほど傾斜が緩いが、片手をしっかり鎖に掛けてチムニー状の凹部を下る。大きなスタンスがあるので慌てず一歩一歩下る。

㊟残雪期は、残雪が下部ルートを塞いでいることもあるので注意。(出発前に情報確保)

平蔵の頭(左奥)のスラブ

平蔵の頭(左奥)のスラブ

平蔵の頭のスラブ(後方)を過ぎ右に広い平蔵谷を見ながら行くと、7~8mの岩稜の鎖場に出る。そこを登るとカニのタテバイが待っている。

㊟登り(右)と下り(左)の鎖があるので注意。

剣岳・点の記の撮影場所

剣岳・点の記の撮影場所

ここは、映画「剣岳・点の記」が撮影された場所で、今、登山者が座っているところに長次郎と芳太郎の二人が座って撮影された。名カメラマンである木村監督のカメラポジションは流石である!

カニのタテバイ

カニのタテバイ
カニのタテバイ2
この場所は、すでに情報過多になるほど案内されているので詳細は控えて、これまで安全面で気づいたことを述べてみたい。

㊟1,鎖はワンスパン一人・・・ワンスパン(支点と支点の間)の鎖に複数の登山者が捕まって登っているのが未だに多く見受けられる。何度もこの場所で見ているが、鎖に捕まっている複数の登山者の一人がバランスを崩すと捕まっている他の登山者も一緒に振られてとても危険であるので厳守したい。

㊟2,落石に注意・・・このカニのタテバイの真上(100m以上)にカニのヨコバイのルートがある。そこから頻度は少ないが登山者による落石が・・・、また、タテバイを登りきった場所からも登山者による落石が起きている。それにも関わらずタテバイ待ちでその真下で写真を撮りながら待っている登山者が多く見かける。

過去に、この場所で落石による重大な事故が何度も起きているので順番が来るまで安全な場所で待機したい。また、この場所では落石が襲来するのが当然の場所だと意識して登りたい。

カニのヨコバイ”への案内板

カニのヨコバイ”への案内板

タテバイを終えて岩稜を越えて鎖に導かれて登ると”カニのヨコバイ”(下山路案内)のこの看板に出会う。これを目印に右に折れて進む。

カニのヨコバイ分岐からの上り

カニのヨコバイ分岐からの上り

カニのヨコバイ分岐から約30mで岩場のクライミングがほぼ終了する。だが、ここは登山道が往路と復路とが兼用で登りと下山の登山者が狭い岩場ですれ違うことになるのでとても危険である。そこで、登りと下山の登山者が途中ですれ違いが発生しないよう声を掛け合って咬合に往来して安全を図りたい。

山頂手前

山頂手前

ヨコバイからの岩場を登ると傾斜が緩み広く開ける。ここから、あと20分ほどで目指す山頂だ。

本峰山頂

本峰山頂

山頂は、ゴツゴツした岩場だが意外と広い。まず目に着くのが祠(劔獄社)である。この祠は二代目で2004年8月の建立されたもので新しい。初代は1957年に個人の御高志によって建立されたが半世紀の長い歳月の風雨に晒されて老朽化し惜しまれつつ交代となった。

また、山頂からの眺望は遮るものが無い360度の眺望が楽しめる。天気のいい日は富士山をはじめ30座以上の百名山が眺望できる。

山頂の三角点

山頂の三角点

祠から10mほど北東側に岩の中から三角点が顔を出している。これは、*国土地理院の剱岳測量100周年記念 事業の一環で映画「剣岳・点の記」の上映も手伝って設置された。それ以前は、4等三角点のため標石は設けられていなかった。なお、剣岳の最高度地点は祠の北側約5mにある三角形状に突き出た岩である。

*剣岳の初登頂は、剣岳測量隊の柴崎芳太郎なによって1907年(明治40年7月13日に登頂が正式記録となっている。

山頂からの展望



山頂からの展望6

山頂からの展望5

山頂からの展望4

山頂からの展望3

山頂からの展望2

本峰山頂から下山 - カニのヨコバイへ

カニのヨコバイ”への案内板

本峰山頂からの下山は登ってきた登山道を辿ってこの看板まで下る。ここで往路とは別れ“カニのヨコバイ”へと入る。

カニのヨコバイ

カニのヨコバイ
カニのヨコバイ2
 別山尾根の一番の難所。ガイドする際は、ここから平蔵のコルまで緊張を強いられる場所だ。カニのタテバイ同様、ここも情報過多になるほど案内されているので詳細は控えて、これまで安全面で気づいたことを述べてみたい。

㊟1,鎖はワンスパン一人・・・タテバイ同様厳守したい。

㊟2,落石に注意・・・浮き石を避けて絶対に落とさない。真下にはタテバイ待ちの登山者がいることを常に留意しておく。

㊟3,岩から身体を離す・・・三点支持を守り怖がらず岩から身体を離す。そうすると足元のスタンスがよく見えて安全に進める。よく見られる光景は、怖くなると岩にへばり付いていて身動きが取れなり益々恐怖感が助長されている様子だ。

ハシゴを下る

ハシゴを下る

ハシゴを下る

ヨコバイを終えてホッとする間もなく約10mはある下りのハシゴが待っている。鎖からハシゴに移行する際がポイントで焦らず一歩一歩確認しながら行えばよい。

平蔵のコルへ

平蔵のコルへ

ハシゴを終えると次にルンゼ状の下りを鎖に捕まりながら凹部に入って進めば下り易い。

㊟,落石に注意・・・脆い岩もあるので確認しながらホールド。スタンスを取る。

平蔵の頭(復路)

平蔵の頭(復路)

スラブ状の壁を往路とは別のルートで登る。後ろは、平蔵のコルから辿ってきたルート。 ホールド。スタンスが豊富で大きく傾斜が緩いので三点支持を確かめてロッククライミングを楽しめながら登れる。

平蔵の頭のピークから

平蔵の頭のピークから

カニのヨコバイからここまで辿ってきたルートが俯瞰できる。左のスカイラインは早月尾根。

平蔵の頭の下り

平蔵の頭の下り

平蔵の頭のピークから10mほどの下りだが傾斜が強いのでしっかり鎖に捕まって降りる。

ケルンの広場

ケルンの広場

ここでほぼ核心部が終わる。一息を入れてから前剣、一服剣へと向かうがが気を緩めず下山したい。

剱岳・別山尾根と剣沢(別山より)



剣沢小屋~本峰(山頂)ルートの終わりになります。